相続した実家や空き家をお持ちの方が売却を検討するとき、空き家特例という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。
正式には「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」といい、一定の要件を満たして売却した場合に、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度です。
うまく活用できれば売却時の税負担を大きく抑えられる一方、要件の見落としや手続きの誤りで特例が使えなくなる場合もあります。
この記事では、空き家特例の仕組みから2026年時点の改正内容、そして4つの注意点を解説します。

空き家特例は、平成28年度に創設され、その後も改正が重ねられてきました。
ここでは制度の概要と、令和6年度改正によって変わった点、対象となる建物の判定基準を解説します。
不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合、その利益に対して所得税・住民税が課されます。
例えば、相続した実家を4,000万円で売却し、取得費や諸経費を差し引いた譲渡所得が2,500万円だった場合、特例を適用することで課税対象はゼロとなり、本来発生するはずだった所得税・住民税が不要になります。
ただし、令和6年1月1日以降の譲渡については注意が必要です。
被相続人居住用家屋とその敷地を相続または遺贈により取得した相続人の数が3人以上の場合、控除額の上限は2,000万円に縮小されます。
相続人が複数いる場合は、事前に人数を確認しておくことが大切です。
※出典:国税庁|被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
令和6年1月1日以後の譲渡から、特例の適用範囲が広がりました。
改正前は、売却前に建物の耐震改修を完了させるか、建物を解体して更地にした状態で売ることが要件でした。
しかし改正後は、売却後に一定の期限内で買主が耐震改修または除却(解体)の工事を行った場合にも、特例が適用されるようになっています。
具体的には、譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに買主が工事を完了させることが条件です。
売主側の負担で事前に工事を終わらせなくても特例を使える場面が広がったため、売却のタイミングや費用の組み立て方に選択肢が生まれたといえるでしょう。
ただし、この改正が適用されるのは、令和6年1月1日以後に行う譲渡に限られます。
改正前の売却には従来の要件が適用されますので、売却時期が制度の適用内容に影響する点を念頭に置いておくことが大切です。
空き家特例の対象となる建物には、明確な判定基準があります。
国税庁の定めによれば、対象となるのは「昭和56年5月31日以前に建築された建物」で、いわゆる旧耐震基準の建物となります。
また、区分所有建物登記がされている建物(分譲マンション)は対象外です。
一棟の建物でも区分所有登記がされていれば適用できないため、マンションを相続した場合は原則として別の手段を検討する必要があるでしょう。
さらに、対象となるのは、主として被相続人の居住の用に供されていた一の建築物に限られます。
母屋と離れのように複数の建物が同じ土地にある場合、対象となる建物と敷地の範囲が限定されますので注意が必要です。
敷地の範囲の算定方法は複雑になることもあるため、不明な点は税務署や専門家にご確認いただくとよいでしょう。

空き家特例は、被相続人がどのような状況でその家に住んでいたかによって、適用できるかどうかが変わります。
ここでは、判定ミスを防ぐための要件と確認方法を解説します。
空き家特例が適用されるのは、相続の開始直前において被相続人以外に居住していた人がいなかった場合に限られます。
つまり、被相続人が亡くなる直前まで一人でその家に住んでいたことが原則です。
例えば、子どもや親族が同居していた場合は、この要件を満たさないため特例を適用できません。
また、しばらく前まで同居していたが、相続発生時には出ていたという場合でも、相続開始の直前の状況で判定されるでしょう。
なお、居住実態については、市区町村に「被相続人居住用家屋等確認申請書」を提出し、「被相続人居住用家屋等確認書」の交付を受けることで証明します。
さらに、電気・ガスの閉栓証明書や水道の使用廃止届出書、家屋の使用状況がわかる写真なども添付資料として必要になる場合もあります。
書類の準備は時間がかかることもありますので、売却の計画が固まった段階で早めに確認を始めると安心です。
被相続人が亡くなる前に老人ホーム等に入所していた場合でも、一定の要件を満たせば特例を適用できます。適用できる主な要件は以下の3点です。
また、対象となる老人ホーム等の施設は以下の通りです。
書類面では、電気・水道・ガスの契約名義と使用中止日がわかる書類、または老人ホームが保有する外出・外泊等の記録などが実務上の確認書類として求められます。
入所していた施設に問い合わせて書類を取り寄せる必要がある場合もあるため、早めに動き出すことが大切でしょう。
※出典:国税庁|被相続人が老人ホーム等に入所していた場合の被相続人居住用家屋
相続した物件が共有名義になっている場合や、一部を事務所・店舗として使っていた場合は、判定がより慎重になります。
共有名義の場合、複数の相続人が時期を違えて売却するときは、譲渡対価の1億円の上限判定に注意が必要です。
1億円以下かどうかの判定は、最初に特例を適用して売却した日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに分割して売却した部分や、他の相続人が売却した部分も含めた売却代金の合計額で行います。
一人ひとりの売却額が1億円以下であっても、合算して1億円を超えれば特例の適用外となる可能性があるということです。
さらに、この上限を超えた場合は、その売却の日から4か月以内に修正申告と納税が必要になるため、共有者との売却スケジュールの調整が重要です。
一方、住居の一部を事業・貸付の用に供していた建物(いわゆる併用住宅)については、特例の対象は「主として被相続人の居住の用に供されていた一の建築物」に限られます。
店舗や賃貸部分が含まれる建物は、その範囲の取り扱いについて個別の判断が必要になる場合があるでしょう。
いずれのケースも、判断が難しいと感じたら税務署や専門家へ相談すると安心です。
売却後に特例の適用ができないと判明した場合、修正申告と追加納税が必要になることもあるからです。
※出典:国税庁|被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

空き家特例には、売却までの期限や申請手続きのルールが細かく定められています。
ここでは、売却期限の考え方と申請から確定申告までの流れを解説します。
空き家特例を適用するためには、相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却を完了させる必要があります。
例えば、2022年3月に相続が開始した場合、3年を経過する日は2025年3月です。 その年の12月31日まで売却が完了していれば要件を満たします。
一方、2026年1月以降の売却では特例は使えません。
相続後に遺産分割協議や名義変更手続きなどを経てから売却活動を始める場合、気づかないうちに期限が近づいていることがあるため、相続が発生したタイミングで売却の期限を計算しておき、逆算してスケジュールを組むことが大切です。
特例の適用を受けるには、前述したとおり、売却した物件の所在地を管轄する市区町村長から「被相続人居住用家屋等確認書」の交付を受けることが必要です。
申請は、物件の所在地を管轄する市区町村の窓口で行い、必要書類を揃えて申請書とともに提出し、内容が確認されると確認書が交付される流れです。
交付までの期間は市区町村によって異なりますが、窓口への問い合わせから書類の収集・申請・交付までを合わせると、数週間程度かかることも珍しくありません。
確定申告の期限から逆算すると、売却が完了したらすみやかに申請に動き出すことが大切です。
事前に管轄の市区町村窓口へ問い合わせ、必要書類と所要期間を確認しておくと、手続きがよりスムーズに進みます。
特例の適用を受けるためには、確定申告書に必要書類を添えて所轄の税務署に提出することが必要です。
以下に、確定申告時に必要となる主な書類をまとめましたのでご覧ください。
| 書類 | 主な確認事項 | 備考 |
|---|---|---|
| 譲渡所得の内訳書 | 譲渡価額・取得費・諸経費 | 確定申告書付表兼計算明細書(土地・建物用) |
| 登記事項証明書等 | 相続取得の事実・建築年・区分所有でないこと | 不動産番号を明細書に記載すれば添付省略も可 |
| 被相続人居住用家屋等確認書 | 居住実態・空き家状態の継続 | 管轄市区町村長から交付を受ける |
| 耐震基準適合証明書等 | 耐震基準を満たすこと | 売却前2年以内に調査完了のものに限る。解体済みの場合は不要 |
| 売買契約書の写し等 | 売却代金が1億円以下であること | 共有者がいる場合は合算額で判定 |
確定申告書の提出期限は、売却した年の翌年の2月16日から3月15日までです。
また、登記事項証明書については不動産番号を「譲渡所得の特例の適用を受ける場合の不動産に係る不動産番号等の明細書」に記載すれば添付を省略できる場合があります。
※出典:国税庁|申告手続き(譲渡所得関係 申告書添付書類)

空き家特例は要件が複数あり、一つでも満たさないと適用できません。ここでは、失敗しやすい4つの注意点を具体的に解説します。
売却前に建物を解体して更地にして売る場合は、以下の3つの条件を満たす必要があります。
解体後に別の建物を建てたり、駐車場として貸し付けたりすると対象外となる場合があります。
一方、令和6年1月1日以後の譲渡では、建物が残った状態で売却し、その後に買主が翌年2月15日までに解体または耐震改修を行う形でも特例を適用できます。
この場合は、売主が解体費用を負担しなくて済むこともあります。
対象となる建物は昭和56年5月31日以前に建築された旧耐震基準の建物ですが、建物が残った状態で売却する場合は、譲渡の時に一定の耐震基準を満たすものであることが条件の一つです。
つまり、旧耐震基準の建物をそのままの状態で売却するだけでは、特例は適用できません。
耐震基準を満たすことを証明するには、耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書の写しが必要です。
これらは、譲渡の日前2年以内に証明のための調査が終了または評価されたものに限られます。
令和6年1月1日以後の譲渡については、譲渡後に買主が翌年2月15日までに耐震改修を完了させた場合でも適用できるようになりました。
特例を適用するためには、前述したとおり相続の時から売却が完了するまでの間、対象の家屋・土地を事業の用、貸付けの用、または居住の用に供していないことが求められます。
例えば、相続後に空き家を一時的に賃貸した場合や、親族が一定期間住んでいた場合は対象外となります。
また、家賃をもらっていなくても実質的に貸し付けていた、誰かに管理を頼んで住まわせたといったケースでも、貸付けの用に供したとみなされる可能性があります。
加えて、解体前に建物を事業目的で使用した場合も同様です。
そのため、売却の見通しが立つまでの間は、原則として無人のまま維持管理することをおすすめします。
ただし、長期間の放置は建物の劣化や特定空き家への指定リスクにもつながるため、早めに売却の方針を決めることが大切でしょう。
空き家の管理については「空き家管理の基本と後悔しないための売却判断」で詳しく解説しています。
空き家特例は、売却代金(譲渡対価)が1億円以下であることが要件の一つですが、複数の相続人が時期を違えて売却する場合、各人の売却額を合算するルールがあります。
合算の対象期間は、最初に特例を適用して売却した日から3年を経過する日の属する年の12月31日までです。
例えば、兄が先に土地の一部を5,000万円で売り、後から妹が残りを6,000万円で売った場合、合計は1億1,000万円となり、この期間内であれば両者とも特例の適用ができなくなる可能性があります。
また、贈与や低額譲渡があった場合もその金額を合算して判定します。
一度特例を適用した後に別の取引で上限を超えてしまうと、その売却の日から4か月以内に修正申告と追加納税が必要になります。
共有名義の不動産を複数の相続人で売却する場合は、事前に全体の売却計画を共有し、合算額が1億円以内に収まるよう調整することが重要です。

空き家特例を活用するには、解体のタイミングや売却スケジュールの組み立てが重要です。
ここでは、愛知県知立に拠点を置く藤原建設がどのようにサポートできるかをご紹介します。
空き家特例では、解体のタイミングが特例の適用に関係します。
譲渡前に解体して更地で売るか、建物付きのまま売って買主が解体する(令和6年以後)かによって、必要な書類や確認書の取得方法も変わります。
どちらが適しているかは、建物の状態・売却希望時期・買主との交渉状況など、複数の条件を踏まえて判断することになります。
藤原建設では、こうした条件を踏まえて、解体工事から土地売却までをワンストップで対応しているため、解体業者と不動産会社間の視点でご提案することが可能です。
また、中間マージンが発生しない体制のため、解体と売却を別々に依頼した場合と比べてコストを抑えられる場合もあるでしょう。
さらに、藤原建設で解体工事をご依頼いただき、続けて不動産売却もご依頼いただくと仲介手数料が半額になるキャンペーンを実施しています。
特例の適用期限から逆算したスケジュール管理も含め、売却までの流れをまとめてご相談いただくことをおすすめします。
この記事では、空き家特例の仕組みと要件、令和6年度の改正内容、失敗しやすいポイント、手続きの流れを解説しました。 特例を活用するために確認すべき主な判断基準を以下にまとめます。
特例の要件はいくつかの条件が重なり合っており、一つひとつの確認が適用の可否を左右します。
空き家特例の税務上の判断については、税務署や税理士への確認が必要ですが、解体のタイミングや土地売却の手順については藤原建設にご相談ください。
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