解体工事を順調に進めるためには、いくつもの法的な届出をする必要があります。
しかし、どのような場面で届出が必要になり、届出を怠った場合はどんなペナルティがあるのでしょうか。
解体工事についての知識を身に着けておくことは、トラブルの発生を防ぐうえでとても大切になります。
この記事では、解体工事の専門家として、知立市の地域性や事情も踏まえながら、義務付けられた届出の種類、提出期限、そしてトラブルを未然に防ぐための注意点をわかりやすく解説します。

知立市や三河地域で解体工事を行う際、届出は単なる形式的な手続きではありません。
これは、環境保全・資源の有効活用・近隣住民の安全と健康を守るための、法律で定められた義務であることを考えると、重要性が分かります。
解体工事には、主に建設リサイクル法と大気汚染防止法に基づく法的義務が伴います。
建設リサイクル法は、解体で発生するコンクリートや木材などの建設資材を分別し、リサイクルすることを義務付けた法律で、廃棄物を減らして資源を循環させることを目的としています。
大気汚染防止法は、アスベストの飛散防止に関する規定が中心となり、2022年4月からは延べ床面積に関わらず、すべての解体工事でアスベストの事前調査が義務化されました。
この他にも、労働安全衛生法・廃棄物処理法・道路法などもあり、届け出を忘れると行政指導や工事停止命令の対象になる場合があります。
解体届出が必要となる理由は、工事の透明性の確保と廃棄物をリサイクル資源として有効活用するためです。
知立市をはじめとする自治体は、届出を通して、どのような建物を・いつ・誰が・どのように解体し、どのような資材が、どのようにリサイクルされるかを把握しなければいけません。
そうすることで、不適正な廃棄物の処理や、アスベストなどの有害物質が飛散するのを未然に防ぎ、地域の環境保全に貢献できます。
よって届出を怠ると、工事の遅延や行政指導・罰則の対象となる可能性があり、後の土地活用や不動産売却にも悪影響を及ぼすことになります 。
建設リサイクル法に基づく届出を怠ったり、虚偽の届出を行った場合は、罰則や最大20万円以下の罰金の対象となります。
また、アスベスト関連の法令違反はより重く、大気汚染防止法に違反した場合は、最大で3ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が課せられる可能性があります。
さらに、建物滅失登記が行えず売買や融資がストップする、建設業許可の更新時にマイナス評価となる、自治体の公共工事指名停止を受ける場合もあります。
このように届け出を怠ると、発注者側の工事が止まるだけでなく、業者側にも大きなダメージを与えることになるのです。

建設リサイクル法では、延べ床面積80m²(約24坪)を境に、届出義務の有無が大きく変わります。
知立市や刈谷市でよく見られる、標準的な木造二階建て住宅がこの規模になるため、戸建ての建て替えを検討している方にとって非常に身近なラインといえます。
床面積の合計が80m²以上の場合、分別解体等の計画書を作成し、工事着工の7日前までに自治体へ届出を行う必要があります。
参考までに、床面積の算定は付属する車庫・物置・増築部分も合算しなければいけません。例えば、母屋が70m²で別棟の物置が12m²の場合、合計82m²となり届出が必要となります。
ただし、屋外に設置されたデッキやカーポートの一部など、固定資産課税台帳に記載のないものは、床面積に算入されないケースもあります。
解体工事で必要となる届出は、主に以下の二種類に細分化されます。
| 届出の種類 | 提出先 | 対象となる工事の基準 | 目的 |
|---|---|---|---|
| 建設リサイクル法に基づく届出 | 各自治体の長または愛知県知事 | 建築物の解体で床面積の合計が80m²以上 | 建設資材の分別・リサイクル |
| 大気汚染防止法に基づく届出 | 愛知県知事 | 特定石綿含有建材がある解体工事 | アスベストの飛散防止と適正な処理 |
この他にも、工事の規模や状況によっては道路使用許可申請や騒音規制法・振動規制法に基づく届出が必要になる場合があります。

解体届出では、建設リサイクル法に基づく分別解体等の計画書を中心に、アスベスト関連の調査報告書、産業廃棄物処理委託契約書など多岐にわたる書類が求められます。
これらの書類は工事規模や構造、含有建材の種類によって微妙に内容が変わるため、自治体の指定様式を必ずダウンロードし、最新版であることを確認してから作成しましょう。
提出時には、正副2部もしくは3部を求められるケースがあり、押印や製本の方法が不備だと窓口で受理されません。
さらに、ライフラインの停止手続きや道路使用許可申請書など、解体工事そのものとは別系統の書類も同時並行で整える必要があるため、着手2〜3か月前から逆算して準備を始めるのが安全です。
建設リサイクル法に基づく届出に必要な書類の様式は、愛知県のホームページや、知立市などの各自治体の窓口で入手できます。
主な様式は、届出書(様式第1号)と、それに添付する各種図面や資料です。
届出書には、発注者や解体工事の実施者の氏名・住所・工事の場所・期間・分別解体の計画などを詳しく記入します。
これらの様式は、基本的に全国共通の基準に基づいていますが、自治体によって提出部数や独自のローカルルールが設けられている場合があるため、各自治体の最新ルールを熟知している業者にお願いしましょう。
届出書に添付する必要がある主な書類は以下の通りです。
これらの書類に不備があると、受理されずに工事着手が遅れてしまいます。
建設リサイクル法の届出は、電子申請を受け付けている自治体もあります。
電子申請の主なメリットは、窓口に出向く手間と時間を節約できる、24時間提出可能、押印が不要、修正指示がメールで届くなどがあります。
電子申請が可能な場合は、自治体の専用システムを通じて、必要な様式や添付書類のデータをアップロードして提出します。

主な流れは、①事前調査→②計画書作成→③届出提出→④解体工事着工→⑤中間確認→⑥完了報告の6段階となります。
各段階で担当者が異なるため、変更が起きた際は即座に共有することがトラブル防止のコツとなります。
解体届出の手続きは、解体業者と契約を結んだ直後に始まります。
発注者が業者に、建物の図面や過去の増改築履歴などの情報を提供し、業者が現地調査を行います。
このほか、建物の所在地・床面積・構造・解体後の土地の活用予定などの基本情報も共有しましょう。
この時点で、業者はアスベストの有無・建物の構造・規模を確認し、建設リサイクル法および大気汚染防止法に基づく届出の必要性を判断します。
建設リサイクル法における届出は、原則として建築物の解体工事の発注者に義務付けられています。
ただし、実際の手続きや書類作成は、専門知識を持つ解体業者に委任することが一般的です。
そのため、適切な業者を選定し、届出に必要な情報を正確に提供し、届出が適正に行われたことを確認することが主な役割となるでしょう。
以下に、届出を進める際の手順やポイントをまとめましたので、参考にしてください。
| 手順 | 目安となる期間 | 重要なポイント |
|---|---|---|
| 業者選定・現地調査 | 着手まで30日以上 | アスベスト調査の実施と報告書の作成 |
| 建設リサイクル法届出書の作成・提出 | 着手の7日前まで | 届出書の記載内容に不備がないか確認 |
| アスベスト届出 | 特定石綿作業開始の14日前まで | 特定建設資材の取り扱い計画を明確にする |

2022年4月1日より、建物の延べ床面積に関わらず、すべての解体・改修工事において、アスベストの事前調査が法令で義務化されました。
この調査は、有資格者である建築物石綿含有建材調査者が行う必要があり、調査結果は自治体への提出も義務付けられています。
知立市周辺の古い建物には、外壁・屋根材・内装材などにアスベスト含有建材が使用されている可能性があります。
アスベスト含有建材が見つかり、除去作業が必要となった場合、大気汚染防止法に基づき、特定石綿排出等作業実施届出書を作業開始の14日前までに、愛知県知事へ提出する必要があります。
この届出には、特定石綿含有建材の種類・使用場所・除去方法・作業スケジュールなど、詳細な情報を記載します。
万が一届出を怠ったり、虚偽の記載をしたりした場合、厳しい罰則が課せられます。
建設リサイクル法とアスベストの届出は、それぞれ別の法律に基づくものですが、どちらも工事着手前の届出が義務であり、密接に関連しています。
アスベスト含有建材は、リサイクルせず、特別管理産業廃棄物として厳重に処分することが義務付けられています。
よって、建設リサイクル法の分別解体計画を立てる前に、アスベストの有無とその処理方法を決める必要があります。
また、アスベストの除去作業が終わらなければ、本格的な解体工事や建設リサイクル法の対象となる資材の分別も進められないため、アスベストの届出はリサイクル法と関連している、とても重要な作業です。

解体工事は、建物がなくなることで終わりではありません。工事後の報告義務まで含めて、発注者の責任は続きます。
解体工事が完了した後、業者は発注者に対して、分別解体等の報告書を提出することが義務付けられています。
これは、分別解体や資材のリサイクルが、計画通りに行われたことを確認するための大切な報告です。
報告書には、解体工事で発生した資材の種類ごとの量、リサイクルまたは処分を行った場所、リサイクル等の実施状況が記載されています。
アスベストの事前調査の結果報告書は、工事完了後も大切に保管する必要があります。
大気汚染防止法では、発注者に対し、事前調査結果の記録の保存を義務付けており、解体工事終了後も3年間保管する必要があります。
この調査結果は、同じ土地で新たな建築や土地売却を行う際にも、土地の安全性を示す重要な書類となるため、紛失しないように注意が必要です。

ここでは、解体届出について多くの方が疑問に思う点をQ&A形式でまとめました。
原則として発注者が行うべきです。しかし、実際には、解体工事の専門業者である施工者が、発注者から委任を受けて届出書の作成や提出を代行することが一般的です。
解体する建物の床面積の合計が80m²未満の場合には不要となります。しかし、届出が不要だからといって、法令遵守の義務がなくなるわけではありません。
床面積が80m²未満であっても、アスベストの事前調査とその記録の保存は、2022年4月以降、すべての解体工事で義務付けられています。
また、騒音や振動に関する条例は、建物の規模に関わらず適用されるため、近隣への十分な配慮と対策は必須です。
解体届出の必要性は、解体する建物の種類(木造、鉄骨造、RC造)や工事内容(全解体、一部解体)によって変わることはありません。
判断基準は、床面積の合計が80m²を超えるかどうかと、大気汚染防止法に基づくアスベストの有無となります。
この記事では、知立市をはじめとする三河地域で解体工事を行う際に必須となる、建設リサイクル法やアスベストに関する届出の重要性、手続き、そして法令遵守の注意点について解説しました。
費用や手続き、そして解体後の土地の活用方法について、不安を感じる点があるかもしれません。
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